温暖化ガス、削減ペースに遅れ 21年度8年ぶり増
環境省が21日発表した2021年度の温暖化ガス排出量は20年度比2%増の11億7000万トンと8年ぶりに前年度を上回った。新型コロナウイルス禍から経済活動が回復したのが主な要因だ。排出削減目標の達成には一段の取り組みが求められる状況になった。
20年度まで7年連続で減少していた排出量は21年度に増加に転じた。実際に国連に届け出る森林による二酸化炭素(CO2)吸収分などを差し引いた排出量は20年度比2%増の11億2200万トンだった。
日本は30年度の排出量を13年度比46%減らす目標を掲げている。この目標に合わせて13年度から機械的に直線で引いた削減幅を達成できていない。日本は30年度に向けてこれまで以上の削減を迫られることになるが、22年度は活発な経済活動で排出量がいっそう膨らんだ可能性もある。
世界をみても、コロナ禍で落ち込んだ経済活動が再開し、21年の排出量は20年から増えた。ロシアのウクライナ侵攻に端を発するエネルギー危機で22年のCO2も微増になったようだ。
主要7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合は16日にまとめた共同声明に、温暖化ガスの排出量を35年までに19年比で60%削減する緊急性が高まっていると明記した。各国とも目標達成に向けてブレーキがかかっている。
コロナ前と比べると、日本の排出量は19年度比で3.3%減った。西村明宏環境相は21日の記者会見で「30年度目標や50年カーボンニュートラルの実現に向けて一定の進捗が見られる」と省エネや再生可能エネルギーの普及で成果は出ていると訴えた。
部門ごとのCO2の排出量は生産量の増加で産業部門が5.4%増、業務その他部門は3.3%増となった。運輸部門は0.8%増えた。
CO2排出量の4割を占める電力部門は依然として化石燃料の割合が大きい。石炭と天然ガス、石油の火力の合計は72.9%に上った。再生エネは20.3%と拡大しつつあるが、再稼働が緩やかに進む原子力は6.9%にとどまった。
足元では東京電力ホールディングス(HD)管内の電力供給の余力を示す予備率は7月に3%を見込む。政府が節電を呼びかける「電力需給逼迫注意報」の発令基準となる5%を下回る。
電力会社のミスで原発の再稼働に向けた審査が長期化している例もある。東電HDの柏崎刈羽原発(新潟県)は不祥事が相次いで再稼働できていない。電力の安定供給と排出削減を両立させるには、再生エネや原子力などを含めたバランスのとれた電源構成が欠かせないが、火力頼みの構図はなお続く。